デスクワークを続けていると、腰が重くなったり、肩や首が張ったりする。
そのたびに、
「姿勢が悪いからだろう」
「背筋を伸ばして座らないと」
「もっと胸を張った方がいいのかな」
と考えていませんか?
もちろん、椅子や机の高さを調整し、身体に負担の少ない姿勢を取ることは大切です。
しかし、腰痛や肩こりを防ぐために必要なのは、「正しい座り方」を意識することだけではありません。
どれだけきれいな姿勢でも、長時間ほとんど動かずに座り続ければ、特定の筋肉や関節へ負担が集中します。
この記事では、デスクワークで腰や肩がつらくなる理由と、
正しい座り方だけでは改善しにくい原因、仕事中に取り入れたい対策について解説します。
デスクワークの腰痛・肩こりは「姿勢の悪さ」だけが原因ではない
デスクワーク中は、座った状態でパソコンや書類を長時間見続けます。
このとき問題になりやすいのが、姿勢の形だけでなく、同じ姿勢を長時間続けることです。
身体をほとんど動かさない状態が続くと、姿勢を支える筋肉が弱い力を出し続けます。
その結果、次のような状態が起こりやすくなります。
・腰や背中の筋肉が張る
・お尻や股関節を動かす機会が減る
・頭や腕が身体より前へ出る
・肩が上がった状態で固まりやすくなる
・背中が丸まり、胸まわりが動きにくくなる
・脚を組むなど、左右差のある座り方が増える
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」でも、
腰痛には不自然な姿勢だけでなく、長時間の静的な作業姿勢、
作業環境、身体的要因、心理・社会的要因など、複数の要因が関係するとされています。
つまり、デスクワークによる腰や肩のつらさは、
👉「姿勢が悪いから」と一つの原因だけで考えないこと
が大切です。
参考:厚生労働省「職場における腰痛予防対策の推進について」
正しい座り方でも腰や肩がつらくなる理由
「背筋を伸ばして、胸を張って座る」
一見すると正しい姿勢に思えますが、力んだ状態で長時間保とうとすると、
かえって腰や肩が疲れることがあります。
例えば、胸を張ろうとして腰を強く反らせると、腰まわりの筋肉が緊張し続けます。
肩甲骨を無理に寄せようとすると、首や肩、背中の筋肉に力が入りやすくなります。
また、お腹を強くへこませ続けたり、顎を必要以上に引いたりすると、
自然な呼吸や姿勢の変化を妨げることがあります。
大切なのは、100点の姿勢を一日中固定することではありません。
・背もたれを使う
・座り直す
・足の位置を変える
・一度立ち上がる
・短時間歩く
このように、姿勢をこまめに変え、身体にかかる負担を分散させることが重要です。
腰がつらくなる背景には骨盤と股関節が関係する

座っている間は、骨盤や股関節の動きが少なくなります。
浅く腰掛けて背中を丸めた状態では、骨盤が後ろへ倒れやすくなります。
反対に、姿勢を良くしようとして腰を反らせすぎると、
骨盤が前へ傾き、腰の筋肉に負担が集まりやすくなります。
デスクワーク後に立ち上がったとき、
・腰が伸びにくい
・股関節の前側が詰まる
・お尻に力が入りにくい
・腰を反らさないと立ちにくい
・歩き始めに腰が重く感じる
という方は、座っている間に骨盤や股関節を動かす機会が少なくなっている可能性があります。
この場合、腰だけを揉んだり伸ばしたりするのではなく、股関節やお尻、体幹を動かすことも大切です。
肩こりは肩だけをほぐしても改善しにくい
パソコンの画面が低い、キーボードやマウスが遠い、
肘を支えられないといった環境では、頭や腕が身体より前へ出やすくなります。
すると、首の後ろ側や肩まわりの筋肉は、頭や腕を支えるために働き続けます。
その結果、
・首の付け根が張る
・肩がすくむ
・肩甲骨の内側が重く感じる
・腕や手まで疲れる
・胸が縮こまる
といった状態につながることがあります。
肩を揉んだ直後は楽になっても、パソコン作業を再開するとつらさが戻る場合は、
肩だけでなく、画面や机の位置、胸まわりの動き、肩甲骨、骨盤の位置まで見直す必要があります。
デスクワークの負担を減らす作業環境

正しい姿勢を固定する必要はありませんが、身体に余計な負担がかかりにくい環境を整えることは大切です。
まずは、次のポイントを確認してみましょう。
・椅子へ深く腰掛け、背もたれを使う
・足裏全体が床につく高さへ調整する
・足が床につかない場合は、安定した足台を使う
・机の高さは、肩がすくまず肘を自然に置ける位置にする
・キーボードやマウスを身体の近くに置く
・画面との距離を、おおむね40cm以上確保する
・画面の上端を、目の高さと同じか少し下にする
・机の下を整理し、脚を動かせる空間を確保する
足が床から浮いていると、下半身で身体を支えにくくなり、骨盤や上半身の位置も安定しにくくなります。
また、机や椅子の高さが身体に合っていないと、
肘をついたり、腰を丸めたり、画面を見上げたりする姿勢が増えることがあります。
厚生労働省のガイドラインでも、
足裏全体が床に接すること、画面との距離、画面の高さ、
椅子・机・入力機器を総合的に調整することが示されています。
参考:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
座り方よりも「座り続けない仕組み」をつくる

作業環境を整えても、仕事に集中すると長時間動かなくなってしまいます。
そのため、姿勢を意識するだけでなく、定期的に身体を動かす仕組みをつくりましょう。
例えば、
・30分を目安に一度座り直す
・電話中は立つ
・飲み物を取りに行く
・コピーや印刷の際に少し歩く
・立ち上がって股関節を伸ばす
・肩を回しながらゆっくり呼吸する
・座る作業と立つ作業を交互に行う
など、短い動きを挟むだけでも構いません。
厚生労働省のガイドラインでは、連続する情報機器作業を1時間以内とし、
次の連続作業までに10~15分の作業休止時間を設け、
その間にも1~2回程度の小休止を入れることが示されています。
また、労働者健康安全機構の資料でも、
同じデスクワーク中に姿勢を変える、脚を伸ばす、
立って作業する、ストレッチを行うといった対策が紹介されています。
👉 完璧な姿勢を長時間保つより、姿勢を定期的に変えることが大切です。
参考:労働者健康安全機構「パソコンやスマートフォンなどを使用した作業と身体的不調」
短時間でも身体を動かすことに意味がある
「運動するなら、まとまった時間を確保しないと意味がない」と考える方もいるかもしれません。
しかし、仕事の合間に短時間身体を動かすことも、デスクワークによる負担を見直す一つの方法です。
国内のデスクワーカーを対象とした研究では、
・片脚立ち
・スクワット
・ストレッチ
・閉眼での腹式深呼吸
から3種類を組み合わせた約3分間の運動を、午前と午後に実施しています。
2か月間の取り組みを分析した結果、運動の実施量が多かったグループでは、
腰の痛みやだるさに改善が認められました。
この研究だけですべての腰痛に効果があるとは断定できませんが、
仕事の合間に短時間でも身体を動かす習慣が、腰の不調を軽減する可能性を示しています。
参考:上野美由紀ほか「デスクワーカーの座位行動中における運動プログラムの構築」産業衛生学雑誌、2024年
ストレッチだけで変わらない場合は身体の使い方を確認する
腰や肩がつらいとき、ストレッチや筋膜リリースは一つの方法です。
しかし、硬くなった部分をほぐすだけでは、
仕事中の姿勢を支える力や身体の使い方までは変わらないことがあります。
例えば、
・股関節を動かさず、腰だけで動いている
・胸まわりが動かず、首や腰で補っている
・肩甲骨を安定させにくい
・姿勢を整えようとして腰を反らせている
・足裏で身体を支えられていない
といった身体の癖がある場合は、ストレッチに加えて、必要な部分を動かすトレーニングも大切です。
👉「使いすぎている部分を整え、使えていない部分を動かす」
この両方を行うことで、デスクワーク中の負担を分散しやすくなります。
まとめ|必要なのは完璧な姿勢ではなく、姿勢を変えられる身体
デスクワークで腰や肩がつらくなる原因は、単純な姿勢の悪さだけではありません。
椅子や机の高さ、画面の位置、長時間の同一姿勢、骨盤や股関節の動き、
胸まわりや肩甲骨の状態などが複合的に関係します。
正しい座り方は大切ですが、その姿勢を一日中固定する必要はありません。
重要なのは、
・身体に合った作業環境をつくる
・同じ姿勢を長時間続けない
・こまめに立ち上がり、身体を動かす
・硬い部分だけでなく、全身の使い方を整える
ということです。
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